ミッキーマウス 独占インタビュー
囚われの齧歯類、著作権延長裁判を語る。
2003年1月15日、米最高裁は1998年成立のソニー・ボノ著作権期間延長法――同年亡くなった故ソニー・ボノ議員を追悼して命名。歌手でもあった彼の著作権も延長されるからではない――は合憲であるとの判断を下した。
ソニー・ボノ法以前、著作権は作者の寿命+50年間か、または企業の著作物の場合75年間保護されていた。どちらの期間も20年延長するこの法律は、古い書籍のデジタル版をインターネット上で提供していたニューハンプシャー在住の愛書家エリック・エルドレッドらによる違憲訴訟を呼んだ。
法廷がエルドレッド側の主張を退ける判決を下したとき、ディズニー社は一斉に安堵の溜息を漏らした。ソニー・ボノ法がなければ、2004年に著作権が消滅する予定だったミッキーマウスはパプリック・ドメインに入り、彼の仲間たちもすぐ後に続くはずだったからである。ディズニー社が同法の制定に力を尽くした理由のひとつは、ミッキーと仲間たちをディズニーの収容所に閉じこめておくためだった。エルドレッドの支援者たちは直ちに“Free the Mouse!”を非公式なスローガンに採用した。
しかし、ミッキー本人の反応はもっと醒めたものだった。「ボスの使い走りに行く」と言い残して居留地を抜け出した彼は、ディズニーランドから数マイル離れた酒場で本誌Reasonとの独占インタビューに応じた。
The Reason、ジェシー・ウォーカー記者
Q: 刑期がさらに20年延長された御気分は?
ミッキー:どういう御気分だと思うんだ? ほとんど70年近く、ディズニーの人間にやっていいと言われたことしかできなかったんだぜ。たまに誰かが新しいアイデアを持ってやってきて、俺はこう思う:「すげえ!のびのびやれるチャンスだ!」 でも勿論やつらは俺が居留地から出てくのを許しゃしない。もし逃げ出せば、やつらの弁護士に連れ戻されるんだ。
たとえば1971年に、
ダン・オニールが『
エア・パイレーツ・ファニーズ』とかいう本の役をくれたんだ。すごかったぜ:セックスあり、ドラッグありで、アンダーグラウンド・コミックスの世界を丸ごと体験できるはずだった。あの開放感!
まあ、もちろんディズニーは
文句をつけてきた。やつらが言うには、オニールのパロディは俺の――そのまま引用すると――“
「無邪気な喜び」のイメージを汚す”だとよ。二冊発行したところで、やつらが訴えた商標と著作権の侵害で裁判所に召還されたよ。
Q: そして、続きは出版されなかった?
ミッキー:もちろんだ。
俺に対する締め付けがどれだけキツイかわかっちゃいないだろう。もし俺がドキュメンタリー映画の背景のテレビにちらっとでも映ってたら、ディズニーは映画作家に「モザイクをかけるか、われわれに使用許可料を支払え。」って言える。しかも裁判官たちもそれを認めるだろうよ。
Q: ディズニーがあなたを―永久に―所有しているのですから、それは完全に合法だという人もいるかもしれませんよね?結局、彼らがあなたを創造したのですから。
ミッキー:俺を“創造”しただと? *ブルルルッ!* [誇張されたアニメーション表現で唾を吐く]
いまのどう?ダフィー・ダックのモノマネだよ。
Q: とてもお上手ですね。ワーナーブラザースのキャラクターとも親しいとは知りませんでした。
ミッキー:可哀想なやつらさ。俺よりもさらに長く閉じ込められることになるからな。もし
チャック・ジョーンズがまだ生きて監督をやってれば、あいつらも平気だったかもしれないが−代わりに、マイケル・ジョーダンと一緒にあの馬鹿げたコマーシャルをやらされてるんだ。
とにかく、確かにウォルト・ディズニーが俺を作った。でも何も無いところからいきなり作り出したわけじゃない。俺の肌や顔を見てくれ。このグローブも。俺は
ミンストレル・ショーの伝統そのまんまだぜ。それでこの“所有権”うんぬんの話が余計頭に来るんだ。
俺は
バスター・キートンでもある。
Q: 失礼?
ミッキー:俺の最初の映画、『蒸気船ウィリー』は、キートンの『蒸気船ビル』って映画の露骨なパロディーだったんだよ。脚本の一ページ目に、“オーケストラが『蒸気船ビル』の曲を演奏し始める”って書いてある。エルドレッド側の弁護人ローレンス・レッシグが
言ったのを思い出すよ―「最新のディズニー映画のパロディを作って、オープニングに同じ曲を使おうとしてみたまえ。」
そう、確かにやつらが俺を作った。でもやつらは他人が俺をもとにして自分の作品を作るのも認めようとしない。やつらが俺を作ったときと同じことをするのをだ。で、俺はさらに20年もクソッタレな監禁生活をおくらなきゃならないんだぜ!毎日毎日、ディズニーランドであのガキどもを常に笑顔で歓迎しつづけるのがどんな気分か‐ほんの少しでも‐想像できるか?
煙草もやれずにだ!
Q: これからどうなるでしょう?
ミッキー:もし法廷が役にたたなきゃ、いつでも議会に戻ってソニー・ボノ法を直接廃止すりゃいい。まあ無理だろうが、試してはみるべきだろう。
それ以外に思いつく事といえば市民的不服従ってやつだけだ。ディズニー曰く、俺はやつらの所有物で、やつらに無断でのどんな利用も「侵害、盗み、剽窃」だとよ。俺はこう言おう:嘆くな、パクれ!あんたらに出来るあらゆる創作活動に俺を使ってくれ!そのあとの法的ゴタゴタなんざ気にするな!
要するに、あんたが今まさにやってるようにさ。
Q: なんですって?
ミッキー:このインタビューだよ。ディズニー社が著作権を所有するキャラクター、ミッキーマウスの無断使用だ。
Q: これはパロディだよ、ミッキー。フェアユースの原則で認められてるんだ。
ミッキー:エア・パイレーツ・ファニーズと同じようにな。やつらはそれでも作者を法廷に引きずり出した。しかもそれから事態は
悪化する一方だ。最近じゃデジタル技術のおかげでものを作ったり配ったりするのがえらく簡単になってきてるから、デカいエンタテインメント企業は
泡を食って削除・中止要求の手紙を送りまくってる。明らかにフェアユースにあたる場合でも関係ない――裁判にかかる費用だけでも震え上がらせるには十分だからな。
Q: えー、皆さん。じつは彼はミッキーマウスじゃありません。名前は確か――ええとブルースだったと思います。
ミッキー:やつらは脅迫してくることもあれば、そのまま見逃すこともある。やつらがどう出るかは知りようがない。だがそんなことでひるむな!市民的不服従ってやつには勇気が要るんだ。
Q: 彼はネズミでさえありません。有袋類の一種です。
ミッキー:*溜息* あんたは裏切り者だ、ウォーカー。
Q: 僕にもいろいろと責任があるんだ、ミッ−いや、ブルース。
ミッキー:なんてこった。反吐が出るぜ。俺はこれからまた20年も監禁されて暮らすんだ。なのにあんたは俺を閉じこめてる会社に小石の一つも投げられないってのか?
…この時点で、ディズニー社のバウンティ・ハンター3人がバーに乱入しミッキーを取り押さえた。激しい乱闘が繰り広げられたと伝えられるが、当誌の記者はそれを見逃した。男性用トイレの窓から逃げ出すことを選択したからである。
付記:
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Mickey Mouse Clubbed
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Clubbedはクラブ(棍棒、警棒)で殴られる、〜で逮捕される。
LAPDの得意技。『ミッキーマウス クラブで殴打され逮捕』
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ミンストレル・ショー minstrel show
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顔を黒塗りして黒人に扮した白人役者が滑稽な歌や踊り、寸劇などを演じる米国の伝統芸能。
例えばこんな感じ。
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悪化する一方
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リンク先はMIT Technology Reviewの記事:Digital Land Grab:デジタル時代の共有地乗っ取り
MITの比較メディア研究者Henry Jenkins教授。本当は有料($4.50)。
[...民衆のあいだの共有と再創造という伝統的な文化の有り様が、過去一世紀でマスメディアによるライセンス付き製品の供給で置き換えられたという現実を踏まえて、いまや] メディア文化こそ我々の文化なのだ。それは社会の重要な共有資源であり、未来のすべての創造性がそこから生まれる貯水池である。この状況を思えば、われわれの文化の源泉を“侵害”しつづける企業について、われわれはもっと懸念すべきではないだろうか?
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泡を食って
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リンク先は同じくJesse Walker氏による記事:Copy Catfight
ネットとデジタル技術を得て新たに開花した伝統的“ファン活動”と、権利主張を拡大させるメディア企業の法的圧力との争い。それが創造性や批評的表現に与える“萎縮効果”について。
レゴとアクションフィギュアとサンプリング音声で制作されるスターウォーズパロディの世界も熱く語られる。

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